第205章

温井知絵は、ふっと息を呑んだ。

この大物マダム、本当に思いつきで動く人だ。さっきまで昔話に浸っていたくせに、今度は急に身元を探り始めるなんて。

……たぶん彼女、私のことをどこかの名家の令嬢だと思ってる。

「奥さま。仮面舞踏会って、ミステリーが命でしょう?」

知絵はにこりと笑ってみせた。

「ですから、そのご質問にはお答えできません」

陸川志紀は、その言葉を聞きながら知絵の顔をじっと見た。

仮面で目元と鼻筋の半分は隠れている。けれど、見えている瞳と口元、顎のライン。横顔は祐未に似ているのに、祐未よりもずっと整っていて――しかも、声も柔らかく、所作も品がある。

今すぐ身元が分からな...

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