第211章

東堂彦一の眼差しが、ふっと柔らかくなる。

彼女のことを思い浮かべるだけで、身体にまとわりついていた疲労が、いくらか薄れていく気がした。

昨日は自分で迎えに行けなかった。申し訳なさが胸に残ったまま、電話もずっと繋がらない。晴海が「無事に帰宅しました」と報告してくれなければ、本当に何かあったのではと最悪の想像に飲み込まれていたはずだ。

「彦一……息子……」

病室のベッドの上で、陸川志紀がか細い声で呼ぶ。

救急搬送され、処置の末に命は取り留めた。けれど夜のあいだは痙攣のような発作が何度も起き、悪夢に絡め取られたまま、朦朧として一晩中うわごとを繰り返した。

東堂彦一と東堂兼也――父子はベ...

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