第214章

彼女のまつ毛が、ぴくりと動いた。――そして、すぐに止まる。

身体が、はっきりわかるほど強張っている。

呼吸まで、かすかに途切れた。

東堂彦一はその硬さに気づき、上体を起こすと、毛布をもう一度そっと引き上げて、きちんと掛け直した。

それから何事もなかったように、距離を取る。

目を覚ました温井知絵は――

「……」

ふん。忙しいくせに、抜かりなくキスだけはしてくる。

この男、たしかに私のことが好きなんだろう。

でも、好きってだけ。

人の感情にはいろいろあるけど、「好き」なんてたぶんいちばん軽い。……私も同じ。私だって、ただ好きなだけ。

ぼんやりしたまま、また眠りに落ちた。

...

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