第216章

彼は彼女を見つめていた。

瞳の奥に、煙雨のような薄い靄がかかったみたいで。やわらかく、静かで――そこにどんな感情が沈んでいるのか、読み取れない。

「よく眠れましたよ」

温井知絵は、明るい調子でそう返した。

ティーテーブルの上のティッシュを取りに行くふりをして、視線を自然に外す。数枚抜き取ると、また戻って彼に差し出した。

「髪、濡れてます。早く拭いてください」

「ありがとう」

東堂彦一は受け取ると、適当に拭き、ソファの端へ腰を下ろした。

温井知絵はキッチンへ行き、紅茶を一壺淹れて戻ってくる。

「社長、温まるようにお茶をどうぞ」

カップに注いで、彼の手元へ。

気遣いは完璧で...

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