第217章

「……あ、はい」

温井知絵はそう応じ、そっと脇へ身を引いた。

東堂彦一は、感情の読めない彼女の顔を見て、声の温度を落とす。

「今夜は早めに休め。外をうろつくなよ。こっちは寒暖差が大きい。自分で気をつけろ」

言い終えると、そのまま階段へ足を向けた。

返事を待つこともなく。

温井知絵は、その場から動けない。

短いやり取り。どこにでもある、取るに足らない会話。

それなのに――何かが、確かに変わり始めている気がした。

機内で話をした、あのあとから。

この微細な違和感は、ずっと続いている。

今日の午後、顔を合わせたときは、さらに輪郭がはっきりした。

まるで、気づかれないまま秋が...

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