第221章

東堂彦一は、沈んだ――けれどどこか含みのある眼で、彼女をしばらく見つめた。

「手、だるい……」

「だるくない」

「お湯、ほんと冷たくなった」

「冷たくない」

「……」

ぼんやり甘えた酔い方をしているのを見て、少しだけ心がほどける。

だが、それも一瞬だった。彼は結局、彼女を湯から引き上げた。酔っぱらいに風邪まで重なったら最悪だ。

バスタオルでくるみ、手早く水気を拭う。

酔っぱらいは不満げだった。自分で吐いたくせに、彼の匂いが鼻先に届くと嫌そうに眉を寄せる。

「くさ……」

東堂彦一は淡々と返す。

「そうだな。俺は臭い。君がいちばんいい匂いだ」

そう言って、彼女を抱いて浴...

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