第30章

ヨットは沖へ出た。

温井知絵は小沢諒と連れ立って、ふたたびデッキへ戻る。

船内では――。

東堂彦一が大勢に囲まれ、持ち上げられるようにして持てはやされていた。お世辞の雨をさらりと受け流し、ときおり薄く笑うだけ。安部美波がそこにいても、特別に動揺した様子は見えない。

小嶋景輔は、孫娘に機会を作るのがうまい。

小嶋唯もまた大胆で、隙あらば東堂彦一に話しかけている。顔に『私、あなたが好き』と書いてあるような勢いだ。

東堂彦一は終始、礼儀正しく応じる。冷たくもしないが、熱もない。

その隣の安部美波は、立ち居振る舞いこそ完璧なのに……どこか、笑顔が貼りついているように見えた。

はあ。

...

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