第34章

会食はお開きになった。

東堂彦一が出てきたとき、見た目だけならやけにしらふだった。

瞳は沈んだ光を宿し、足取りもぶれない。

――けれど、ルームキーをこちらに差し出して「会計」とだけ言った瞬間、全員が察した。

社長、もう完全に出来上がってる。

今夜の安部美波は、昨日ほど泥酔していない。小走りで彼の横に寄り、袖をくいっと引いた。

「うち、寄らない? 社長の好きなお酒、あるよ」

「行かない」

東堂彦一は、切り捨てるみたいに即答した。

廊下のカーペットに、少しだけ盛り上がった箇所があった。

彼がそこを踏んだ瞬間、つま先が引っかかる。

後ろにいた温井知絵と小沢諒が支えようとするよ...

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