第55章

彼女は――本当に、もう俺を愛していないのか。

本当に、何とも思っていないのか。

もし少しでも残っているなら、どうして笑って、あんな言葉を言える……。

白瀬冬弥は片手で壁を突き、胸の痛みに足元がぐらついた。

わかった。

彼にとっていちばん残酷な罰は、彼女が離婚したがることでも、去っていくことでもない。

――彼女の心から、完全に摘み取られたことだ。

かつては視界の端から端まで自分だけで、愛して、愛して、世間に伏せた結婚にまで頷いてくれた。婚前契約だって受け入れ、両親に冷たくされても怯まず、甘んじて隣にいてくれた女。

どうして、こんなことになった。

どうして、失ってしまった。

...

ログインして続きを読む