第58章

白瀬冬弥……?

――いや、ありえない。たとえ彼が私が逃げたことに気づいていて、こっちの方向だと見当をつけていたとしても、道中の目立たない山の斜面に私が潜んでいるなんて、どうして分かる?

筋が通らない。どう考えても。

その瞬間、さっき窓の外から声をかけてきた男のことが脳裏をよぎった。

まさか、あいつ……。

あの男、近くに潜んでいて、私がトランクから這い出してこの道へ向かったのを見て、ずっと追ってきたんじゃ――?

そう思った瞬間、背筋がぞわりと粟立った。

温井知絵は身を低くし、さらに奥へ、奥へと潜り込む。暗すぎて足元が見えない。スマホのライトなんて点けたら、居場所を教えるようなもの...

ログインして続きを読む