第60章

温井知絵「……」

――やれやれ。

彼女も観念して箸を取り、残さず食べきることにした。

夏希はもう、東堂彦一に骨抜きだ。

まあ無理もない。あんな顔に優しく見つめられて、あんな甘くて人たらしの声で「半熟卵のせ」なんて言われたら、誰だって抗えない。呪いでも盛られたのと何が違うのか。

女将まで浮き立っている気配がする。

高橋夏希は白瀬冬弥にも無理やり食べさせようとしたが、彼の刃みたいな視線に何度か斬られて、さすがに強行はできなかった。

ラーメン屋を出る。

さっきまで温井知絵は高橋夏希に支えられて歩いていたのに、白瀬冬弥が割り込むように夏希を押しのけ、代わりに知絵の腕を取った。

「い...

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