第65章

ドアを開けた瞬間だった。高橋夏希が口を開くより早く、白瀬冬弥が彼女の肩を押しのけるようにして、まっすぐ中へ踏み込んできた。

「知絵……」

リビングへ駆け込み、ソファに座る温井知絵の姿を見つける。

目の下に沈んだ疲労の影。けれど、彼を見た途端に氷柱みたいに冷え切った視線。

その両方が喉を締めつけ、冬弥の声はひどく出しづらくなった。

「午前中の件は……俺、知らなかった」

温井知絵は表情を動かさない。

「だから? わざわざ来て、何を言いに来たの」

白瀬冬弥が隣に腰を下ろす。

すると知絵は、間髪入れずに立ち上がり、向かいのソファへ移った。

白瀬冬弥「……」

追いかけて隣に座り直...

ログインして続きを読む