第69章

獣じみた直感が働いたのだろう。車窓と車窓がすれ違った、その瞬間――彼は反射的に振り向いた。

見えたのは、黒い帽子のつばの下に覗く鼻筋と唇だけ。

車はそのまま走り去る。

唐沢晴海は無意識にナンバーを記憶した。

一方、高橋夏希もマンションへ急いでいた。

東堂彦一に状況を聞こうと、堪えきれず電話をかける。彼が神様じゃないことも、管理会社だって確認に時間がかかることも分かっている。それでも、焦りが喉元までせり上がって止まらなかった。

東堂彦一は出るなり、要点だけを告げた。

「管理会社からはまだ返事がない。ただ、うちの人間が車庫で、さっき出ていった怪しい車を見つけた。今、追ってる」

「...

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