第70章

東堂彦一は車窓越しに、前方の黒いスポーツカーを捉えた。

距離はせいぜい五、六メートル。

――あのナンバーだ。

「慌てるな。引き続き追え」

沈んだ声だった。冷たいのに、不思議と人の心を落ち着かせる力がある。

「はい」

伊藤良国は息を整え、ゆっくりとアクセルを踏み増した。黒い車の尻尾を、一定の距離でなぞる。

東堂彦一は、怪しい車両を尾行中だという情報を高橋夏希へ流した。彼女が警察に連絡し、同時に唐沢晴海にも応援を回す手筈になっている。

十五分ほど追ったところで、黒いスポーツカーは高級住宅街のゲートへ吸い込まれていった。

こちらの車は入れない。

「ここ……温井さんの前の家じゃな...

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