第71章

この一歩は――踏み違えたのだろうか。

彼女の脳裏に、白瀬冬弥があの日、自宅で吐き捨てた言葉が蘇る。

あれほど怒り狂い、こちらを見る目はまるで生ゴミを見るみたいだったのに。温井知絵のことを口にした途端、瞳の奥に宿ったのは、やわらかな優しさと、拭いきれない罪悪感。

――彼は、私と一緒にいたことを後悔している。

嫌悪している。自分自身まで吐き気がするほどに。

「ぁぁぁぁぁぁっ!」

「今日こそ殺してやる! バラバラにしてやる!」

「これからはあんたの家に住んで、あんたの男と寝るの! あんたが惨めに死んだ瓦礫の上で、毎日めいっぱい幸せになってやる! 冬弥お兄ちゃんと結婚して、子どもも産ん...

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