第72章

彼の嗚咽。

彼の悔恨。

彼の未練。

この夜の彼は、あの端正で大人びた、意気揚々とした盛和の社長ではなかった。

傲慢で強引な白瀬若様でもない。

ただ――約束を破り、いちばん大切な女の子を失くしてしまった、ひとりの少年だった。

戻りたかった。

あの頃へ。時間を巻き戻して。

胸を掻きむしって心臓ごと差し出し、「もう二度と間違えない」と、彼女に信じさせたかった。

……けれど、結局わかってしまう。

もう、戻れないのだと。

夜は長い。

長すぎるほどに、彼はふたりの過去を次々と思い出した。

初めて彼女を見た日のこと。

制服姿で、高いポニーテール。首筋は細く長く、手のひらほどの小...

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