第73章

白瀬冬弥は胸の奥がきゅっと締めつけられた。

「もう二度と結婚しない。ほかの女も作らない……」

「じゃあ、一生独り身でいれば?」温井知絵が言葉を遮る。「私には関係ない。これからは、あなたは自由。私も自由。お互い幸せになりましょ」

「幸せ? 誰とだよ」

白瀬冬弥の脳裏に、東堂彦一の――あの癪に障る顔が即座に浮かんだ。

温井知絵は小さく息を吐く。

「私が一人で綺麗に、一人で幸せじゃ……だめ?」

白瀬冬弥の酸っぱく膨らんだみたいな心臓が、少しだけ落ち着いた。

「本当か? これからは一人で……もう次の男は作らないって?」

縋るような目で彼女を見つめる。欲しいのは肯定の一言だけだった。...

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