第76章

温井知絵は固まった。

頭の中が、やけにふわふわする。

彼の「すまない」は、さっき――初めて彼の寝室に入ったとき、彼が口にしたあの数言に対してのものだ。そこまでは分かる。

じゃあ……?

あの意地悪な社長が、急に良心でも痛んだっていうの?

でも、その次に続いた言葉は、どういう意味?

温井知絵は、彼が言った一語一語を反芻し、噛み砕いて、何度も組み立て直した。

……たぶん、分かった。

彼が怒っていたポイントはこうだ。

あのとき自分が部屋に入らなかったこと。入れなかったこと。

秘書のくせに、あんなにおどおどして、くだらないことばかり頭に浮かべて――情けない、と。

そこまで理解でき...

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