第84章

温井知絵はスマホを取り出し、羽鳥智久と友だち追加をした。

彼女の笑みはやわらかく、胸の奥まで沁みるような香りをまとっている。もともと人を射抜くほどの美貌なのに、控えめでしとやかな気配がそれを包み込み、近寄りがたいはずの距離をふっと縮めてしまう。

――ひどく、惑わせる。

本当に彼女を知る者だけが、その内側にある澄んだ冷たさを理解していた。

「温井秘書、アイコンもご本人と同じくらい綺麗ですね」

羽鳥智久は美人に当てられて、すっかり我を忘れている。社長が同じ場にいることすら、頭から抜け落ちていた。

「ありがとうございます」

温井知絵はさらりと受け取る。

羽鳥智久がさらに話を続けよう...

ログインして続きを読む