第87章

亜季は信じられない、といった顔で固まっていた。

ぶどうみたいに大きな瞳を見開いたまま、状況が飲み込めない。

原野真治の頬の肉が、ぴくりと震える。

――こいつ、紳士ぶってたんじゃなかったのか?

こういうときは女の子をかばうのが筋だろう。膝に乗せないにしても、せめて椅子を用意して隣に座らせるとか。

しゃがませるって、どういう扱いだ。犬じゃあるまいし。

場が、見事に凍りついた。

舞台劇の最中、役者の一人が台本を放り投げて好き勝手にアドリブを始めたせいで、他の役者が全員、次の台詞を失った――そんな空気。

さすがうちの社長。相変わらず、毒舌だね。

内心で、ふっと肩の力が抜けた。

さ...

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