第88章

温井知絵は、そのクソジジイが「夜食をご馳走する」なんて言い出した瞬間、脳内の警報がけたたましく鳴り響いた。

しかも、彼が誰かにこっそり目配せしているのを見て、確信が深まる。

――この夜食、絶対に口にしちゃダメ。

知絵は一歩、前へ出た。

胸の奥はぴんと張り詰めているのに、表情だけは上品に、落ち着き払って。

東堂彦一の隣に立ち、穏やかな声で言う。

「社長。栄養士さんから、夜9時半以降は絶対に何も口にしないようにって言われてます。夜食は……やめておきましょう」

東堂彦一は深い瞳の奥に、やわらかな光を散らして。

「君の言うとおりにする」

その一言に、原野真治の顔がすっと陰る。

「...

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