第96章

東堂彦一「その呼び方、やめさせろ」

温井知絵「……わかった。やめさせる」

耳、良すぎでしょ。元部下が電話口で「温井部長」って呼んだくらいで何なの。食事に誘われたって、別にいいじゃない。

東堂彦一はそれ以上何も言わず、前へ進んで社長室に入っていった。

温井知絵は深く息を吐く。

小沢諒は瞑想でもしているみたいに、閉まった社長室の扉をじっと見つめていた。

社長、まさか……欲求不満なのか。

彼は振り返り、やけに同情的な顔で温井知絵を慰めはじめる。

「知絵さんのせいじゃないっすよ。男ってたまに自制きかなくなるんで。更年期みたいなもんっす」

何が「自制」よ。

小沢諒は、彼女がまだ状況...

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