第98章

この時間に電話って……。

まさか残業?

温井知絵は路肩に車を寄せて停め、通話を取った。

「もしもし、社長」

『来い』

受話器の向こうから届いたのは、落ち着いているのにどこか厳しい声。

「……承知しました」

切ったあと、温井知絵はため息まじりにハンドルを切り返し、会社へ戻った。駐車して折り返し、上階へ。

バッグをデスクに置くなり、息つく間もなく社長室へ向かう。ドアの前で乱れた呼吸を整えてから、ノックして入った。

東堂彦一はちょうどノートPCを閉じ、立ち上がったところだった。

ちらりと彼女を見て、淡々とひと言。

「退勤だけはやけに積極的だな」

温井知絵「……?」

見られ...

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