第99章

矢野芹歌。

しばらく顔を見ていなかったけれど、相変わらず――甘くて、魔性。

彼女は向こうで手を振っている。

「知絵、こっちこっち~」

矢野芹歌の媚びた甘い声に、周囲の視線がいっせいに集まった。

温井知絵が白瀬家と九条家を相手にあれだけ派手に揉めたことを、知らない者なんていない。ここにいる連中は、下世話なネット民よりもずっと内情を知っている。

君亦グループの社長に取り入ったのは確かにすごい。自分たちだって取り入りたい。もし白瀬家と九条家とあそこまで拗らせていなければ、今ごろ媚びへつらっていただろう。

けれど、白瀬家と九条家の機嫌を損ねるのは怖い。

どちらにも付かず、中立でいるの...

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