第1章
夫は、私を選んだせいで幼馴染を救えなかった――だからその後の五年間、私にその代償を払わせ続けた。私が自分の首にナイフを突きつけ、無理やり離婚届にサインさせた時、彼は私たちを乗せた車ごと崖から海へと突っ込んだ。
再び目を開けた時、私は「過去」に戻っていた。
まさか、やり直しの機会が与えられるなんて思ってもみなかった。だが、現実として私はここにいる。同じ無人島、同じように炎を上げる機体、そして森の境界の砂浜に半分埋まった、同じモーターボートの前に。パイロットは助からなかった。生き残ったのは三人だけ。湊、私、そして――彼が私に内緒で同乗させていた客室乗務員、鶴田明日香。
ボートは二人乗り。そして、それを操縦できるのは結城湊だけだった。
彼は砂浜を歩み寄り、私の手を取ろうと手を伸ばしてきた。
「麻衣、乗れ」彼の声は慎重で、計算し尽くされたように響いた。「君は俺の婚約者だ。俺は――」
「あなたがどうするつもりだったか、分かってるわ」私は声を荒らげることなく、一歩後ろに下がった。
「明日香を連れて行って」
彼の動きがピタリと止まった。その顔に、ある変化が走るのが見えた。長年の緊張からようやく筋肉が解放されたかのような、一瞬の、無防備な変化。食いしばっていた顎の力が抜け、強張っていた肩がストンと落ちた。
前回の結末なら、もう知っている。あの時、彼は私を選んだ。誰が見ても正しく、非難されないための選択をして、明日香をこの島に置き去りにしたのだ。彼が島へ戻ってきた時には、すでに熊が島を荒らした後だった。残された彼女の体は、まともな葬儀すら出せない無惨な状態になっていた。
家に戻ってからも、彼はそのことについて直接口にすることは一度もなかった。語る必要などなかったのだ。
「お前は、彼女が吸うはずだった空気を吸って生きている」ある日、彼は感情の抜け落ちた平坦な声で私にそう告げた。「お前が目を覚ます一日は、彼女が永遠に目を覚まさない一日なんだ」
そんな地獄が五年間続いた。父の会社が彼の手へと乗っ取られていくのをただ見ているしかなかった五年間。口座も、権限も、一つまた一つと奪われ、ついには日々の食料品を買うのにも彼のサインが必要になった。自分の家族の食事会にすら呼ばれなくなり、私に連絡してくる人間が残らず彼への報告者に変わってしまうまで。
この地獄から抜け出すために、私は自分の首にナイフを突き立てるしかなかった。それでも、あやうく逃げ損なうところだったのだ。
「麻衣――」
「彼女を連れて行ってと言ったの」私は静かに繰り返した。「行って」
彼はもう一秒だけ私を見つめると、きびすを返し、明日香の腕を掴んだ。
「必ず迎えに戻る」歩き出しながら、彼は言った。「約束する。俺から見える場所にいてくれ」
彼が明日香をボートへと引いていく後ろ姿を、私はただ見送った。彼は一度も振り返らなかった。
「必ず迎えに戻る」
前回、彼は本当に戻ってきた。なぜならあの時、島に置き去りにしたのは明日香だったからだ。彼女を助けに戻るため、彼はボートの最高速度を限界まで引き出していた。だが今回は、彼女はボートで彼のすぐ隣にいる。そして、島に取り残されたのは私だ。
彼のその約束を信じるかどうか、私は三十秒だけ考えるふりをした。
自分の身は自分で守るしかない。幸いなことに、私の実家はプライベートジェットを所有しており、私は機体の構造を熟知していた。
燃える機体に向かって歩き出そうとしたその時、ある音が私の足を止めた。
低く、くぐもった音。ゆっくりと、森の境界の茂みを押し分けて進んでくる、何か重たいものの気配。
私は息を呑み、立ち尽くした。
前回、それは明日香を見つけた。
木々が大きく揺れ――一頭の巨大な熊が、姿を現した。
