第9章

瀬川穂乃視点

三十分後。

倉庫の扉が蹴り開けられた。

戸口に現れたのは、黒いトレンチコート一枚を羽織り、銃を手にした修平だった。その目には怒りの炎が燃えていたが、ベッドにぐったりと横たわる私と生まれたばかりの赤ん坊を見ると、彼の表情は瞬時に複雑なものへと変わった。

「穂乃……」

彼は駆け寄ろうとしたが、柏木律の部下たちが突きつけた銃口に阻まれた。

「ようこそ、兄さん」

柏木律が影から姿を現す。私の生まれたばかりの子供を抱き、勝利に満ちた笑みを浮かべていた。

二人が並ぶのを見て、私は彼らがいかに驚くほど似ているかを改めて思い知った。表情と纏う雰囲気以外は、まるで同...

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