第7章

高田雅弘視点

 雅弘はリビングルームを行ったり来たりしていた。

 三週間。晴美を病院から連れ戻して三週間が経つが、この家に住み着いているのはまるで幽霊だ。能率的で、恐ろしいほど礼儀正しい幽霊。

 雅弘はスコッチをあおった。これでは駄目だ。

 昔の晴美が必要なのだ。海外に行く前の、あの口うるさいヒステリー女ではなく、「使える」晴美が。スケジュールを管理し、学部の食事会を取り仕切り、雅弘の自尊心を満たしてくれるあの哀れで崇拝に満ちた上目遣いをする晴美が。

 来週は学部長の秋季祝賀会がある。今のこのバージョンの晴美を連れていくわけにはいかない。

 時計を見る。午後七時。あと十分で有村浩...

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