第8章

高田雅弘視点

 雅弘は玄関へと歩を進めた。足が鉛のように重い。

 ポーチには、革のブリーフケースを手にした有村浩二医師が立っていた。

「患者の準備は?」有村は一歩踏み出しながら尋ねた。「今夜から再プログラミングの処置を開始できますが」

 雅弘は動かなかった。その体で入り口を塞ぐように立ちはだかる。

「帰ってくれ、有村」雅弘は言った。

 有村は瞬きをし、浮かべていた笑みを強張らせた。「はい?」

「帰れと言ったんだ。食事会は中止だ。その……セッションもなしだ」

「雅弘、話し合ったはずでしょう」有村は声を潜めた。「彼女は負のスパイラルに陥っていると、あなたが言ったんですよ。家族とい...

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