チャプター 94 チャプター

ノア

群衆をかき分けて外へ出た瞬間、夜の空気が思っていた以上に冷たく肌にぶつかった。汗とビールと煙の匂いが、何もかもにまとわりついている――パーティーが終わっても、服にいつまでも染みついて離れない、あの濃くてねっとりした臭いだ。家の中からはまだ音楽が鳴り響いていたが、ここまで来るとくぐもって聞こえる。まるで水の底で鳴っているみたいに。

ただ、少し離れたかった。

息ができるだけの場所が欲しかった。ジャクソンの顔を見ずに済む場所。ダニエルの声を、もう一秒も聞かなくていい場所。

けれど、そう遠くまでは行けなかった。

「おいおい、カーター!」ダニエルの声が夜気を切り裂いた。音楽よりも大きく、...

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