第7章 新たな始まり

二週間後午後、暖かい日差しが区役所のホールに降り注いでいた。私は手元の書類を緊張気味に整えながら、周りで忙しそうに働く職員たちを見ていると、心臓が子鹿のように跳ねた。

「千尋、緊張しないで」水原涼が私の耳元でそっと囁いた。「今日はいい日だよ」

私は頷き、隣でフォーマルなスーツに身を包んだ涼君を見つめると、胸に温かいものが込み上げてきた。たくさんの紆余曲折を経て、私たちはついにこの日を迎えたのだ。

「『さくら荘』の代表の方、壇上へどうぞ」司会者の声が響いた。

私は深呼吸をして、涼君と一緒に前へ進み出た。区長が自ら私たちに「歴史文化保護建築」の認定証を授与してくださり、そのずっ...

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