第12章
沈村薫子は抵抗しなかった。彼に抱き寄せられるまま、ただ遠くを、冷えた眼差しで見つめている。
そのとき――人垣の奥で、小さなどよめきが起きた。
執事に支えられながら、藤原お爺さんがしゃんとした足取りで入ってくる。
退院して間もないはずなのに、今日に限って顔色が驚くほどいい。機嫌も良さそうだ。
沈村薫子は、お爺さんの興を削ぐ気にはなれず、藤原智史と言い合うのは飲み込んだ。
「お爺さん!」
藤原智史がすぐに沈村薫子を連れて迎えに出る。
だが、お爺さんは孫に目もくれず、まっすぐ沈村薫子の手を取った。瞳には慈しみと安堵が満ちている。
「薫子や。ほら、わしの言った通りじゃろう?」
お爺...
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