第21章

彼はふいに、喉の奥でくすりと笑った。滅多に見せない自嘲が混じった笑いで、自分がまるで取り憑かれたみたいにおかしくなっている――そう思うと、滑稽で仕方なかった。

結局、その資料は開かないままだった。

芽吹く前の想いは、名もないまま終わった。

けれど運命というものは、人をからかうのが好きらしい。

次に彼女を見たのは――彼女の結婚式だった。

藤原グループが「ぜひに」と力を入れて招いた重要ゲストの一人として、松野博は藤原家の長男の盛大な婚礼に出席した。

そのとき初めて知った。

――これが、彼女の結婚式でもあるのだと。

主賓席に座り、藤原智史という男が彼女の手を取ってバージンロードを歩...

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