第24章

沈村薫子は心の中でこっそり毒づいた。なるほど、浮いた噂ひとつないわけだ。――そういう趣味だったのね。

松野博は、母親の「この世の終わり」みたいな顔を見て、こめかみがズキズキと痛み出すのを感じた。

「母さん、変な想像しないでくれ。そういうのじゃない」

頭痛をこらえるように眉間を揉み、それから必死に笑いを噛み殺している沈村薫子へ視線を投げる。口調には、笑っているようで笑っていない危うさが混じった。

「……なに。沈村さん、そんなに可笑しい? それとも、君も俺が男が好きだと思ってる?」

名指しされて、沈村薫子はびくりと肩を跳ねた。

尻尾を踏まれた猫みたいに背筋を伸ばし、慌てて両手をぶんぶ...

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