第30章
藤原智史の表情が、目に見えてぴくりと強張った。
視線が泳ぐ。沈村薫子の目をまともに見られないまま、彼は口ごもるように言った。
「薫子、あれは……奥の物置箱に入れてあるんだ。まだ引っ張り出してなくてさ。だから、その……先に座って、昔みたいに少し話さないか。そのあとで、俺も一緒に探す。な?」
そう言いながら、藤原智史は沈村薫子の手に触れようとする。声音には、ほとんど哀願に近い卑屈さまで滲んでいた。
だが沈村薫子は、ためらいなくその手を振り払った。
「今の私とあなたに、話すことなんてある?」
口元に浮かんだのは、薄く冷えた嘲りの笑み。けれど、その笑みは目の奥まで届かない。
かつて愛し...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
縮小
拡大
