第39章

散々迷った末、沈村薫子はひとつ息を吸い込む。何事もなかったふりをして奥様のスカートの裾を整えながら、そっと探りを入れた。

「おばさん、実は……今日の午後、博グループで偶然見かけたんです。泉原家の泉原さんが松野様のオフィスに入っていくところを。松野様、かなり機嫌が悪そうでしたけど……泉原さんのことで怒っていらっしゃるんですか?」

一拍置き、薫子は目を上げる。好奇心を装った、ほんの少しだけの色を声に混ぜた。

「泉原さんの話しぶりだと……松野様のお見合い相手、みたいにも聞こえて」

「……泉原佳恵?」

その名を耳にした瞬間、松野奥様の笑みはすっと消えた。悔しそうに太腿をぱん、と叩く。

「...

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