第44章

村田様の脂ぎった醜い顔が、目の前で際限なく膨れ上がる。

「ぺっ」

唾を吐き捨てると、彼は乱暴に彼女の身体ごと廊下の奥へ引きずった。

「沈村様よ。もう藤原智史とは離婚したんだろ。あいつがてめぇを俺にくれてやったんだ。何を清純ぶってやがる」

手首の骨が砕けそうだった。荒っぽい力に引かれ、沈村薫子の身体中に走る――ガラスで裂けた無数の傷が、いっせいに引きつられる。

濃い色のスーツの下に隠していた傷口がぱっくりと開いた。どくどくと溢れた血が一瞬で布地を濡らし、粘ついて肌に貼りつく。

痛みは針の束。細かく、執拗に、神経という神経へ突き立ててくる。

沈村薫子は歯を食いしばった。弱い泣き声だ...

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