第53章

「さっき下で、まだここの灯りが点いてるのが見えて……つい上がってきちゃったんです」

「営業中です。どうぞ、お入りください」

沈村薫子はすぐに原稿を置き、口元に笑みを浮かべて立ち上がると、来客を迎えに出た。

女はアトリエの中をひと通り見回し、その目にほのかな称賛をにじませる。

そして回りくどい前置きもなく、こう切り出した。

「私、ついこの前まで海外にいたんですけど、数日後にすごく大事なお見合いがあるんです。友人から、ここに新しく感性のいいデザイナーズ店ができたって聞いて。既製服じゃなくて、オーダーってお願いできますか?」

「もちろんです」

沈村薫子はにこやかにソファスペースへ案内...

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