第54章

二人は脇のティーコーナーへ移った。沈村薫子は、淹れたての紅茶を一杯差し出す。

ふわりと立つ湯気が、二人のあいだに淡いぬくもりを滲ませた。

「適当に座って」

沈村薫子は一人掛けのソファに腰を下ろす。

松野博は向かいの二人掛けにゆったりと座り、長い脚を組んだ。そのまま、ごく自然にスター未来の方向性の話へ入っていく。

「オートクチュールは評判で勝負できる。ただ、T市で本当に根を張るなら、既製服のラインも同時に走らせるべきだ」

低く落ち着いた声。その一言一言が、まるで沈村薫子の頭の中にあった設計図をそのままなぞるようだった。

沈村薫子は少し驚いて目を上げる。

「松野さんもそう思うんで...

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