第55章

どうしてだろう。

その女のシルエットを見ているうちに、沈村薫子の胸に広がっていた酸っぱい痛みは、いつしか言いようのない違和感へと姿を変えていた。

写真をじっと見つめる。

どこかで見たことがある気がする。けれど、思い出せない。

眉間の皺が、じわじわと深くなる。

「やばい、ネットのコメント欄、もう大炎上ですよ!」

小春は横で画面をスクロールしながら、ぶつぶつとつぶやいていた。

「みんな、この女の人が誰かって大騒ぎです。G市の海運王の孫娘じゃないかとか、フランスから帰ってきた日系の女優だとか……でも、ほんと、松野様ってこの人にベタ惚れなんですね。スーツケースひとつ、自分で引かせたくな...

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