第61章

沈村薫子の声は氷の刃みたいに冷たかった。

「沈村様。わざわざ私を呼び戻したんだから、用件だけ言って。……ここに座って、あなたたちの幸せな家庭ごっこでも見せたいの?」

「薫子!」

沈村芳明の声が低く沈む。そこには、はっきりとした警告が混じっていた。

「ママ、この人だれ?」

幼くて、わがままな声が、唐突に割り込んだ。

薫子が視線を向けると、リビングのソファ脇に、五、六歳ほどの男の子が立っていた。手にはおもちゃ。大きな目をぱちぱちさせながら、薫子を見上げている。

――これが、あの二人の息子。

泉原順子が慌てて駆け寄り、男の子をぎゅっと抱きしめると、小声で宥めた。

「一樹、いい子。...

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