第67章

「申し訳ありません、警察の方」

沈村薫子の声は、静まり返った夜の空気を切り裂くように冷たかった。

「私と藤原智史は、もう離婚しています。彼のことは、今の私には関係ありません。ご家族か、秘書の方に連絡してください」

『沈村さん、藤原さんはいま非常に興奮しておりまして、留置室でずっとあなたのお名前を叫んでいます。連絡先としてはあなたの番号しか言わない状況です。現状を鑑みまして、恐れ入りますが捜査にご協力いただき、一度こちらへお越しいただけませんか』

受話器の向こうの男性警察官は事務的だった。だが、拒否を許さない圧だけははっきりと滲んでいる。

「……分かりました」

沈村薫子は目を閉じ、...

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