第75章

LINEを開いて、あの備考名を探し出し、そこに「?」だけ打って送った。

次の瞬間、目に痛いほど赤い感嘆符が跳ねた。

――相手にブロックされています。

松野博はその小さな表示を見つめ、完全に呆れて笑ってしまった。声を限界まで落とす。

「……今度は何だよ」

前の席の運転手・周防は、バックミラー越しにちらり、もう一度ちらりと様子を窺い、背筋をぴんと伸ばしたまま息すら殺す。

松野様に仕えて五年。電話を切られた上に、LINEまで消されるなんて初めてだ。

T市では名家の令嬢がこぞって松野博の連絡先を欲しがる。そのくせ彼女は、迷いもなく削除して、逃げ道ひとつ残さない。

「……あいつの家の下...

ログインして続きを読む