第79章

松野博が会社へ駆け戻り、会議室の扉を押し開けた瞬間――目の前のテーブルに、でかでかと「博グループ・松野グループ共同投資」と印字された巨額契約書が置かれていた。

白地に黒の文字。プロジェクト予算は8億。甲の署名欄には、はっきりと「松野博」。

――誰かが、彼になりすましたのだ。

博グループと松野グループの看板を掲げ、彼が聞いたこともない観光開発案件に勝手にサインした。

松野博は椅子から立ち上がり、両手を机に突いた。長年ついてきた幹部たちを、上から見下ろす。

沈んだ黒い瞳。雷鳴を孕んだ空みたいに、重い。

「最後に一度だけチャンスをやる。今ここで名乗り出て、最初から最後まで全部話せ。そう...

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