第8章

坂原千尋は、どうしても沈村薫子なんかにこの機に乗じて智史とよりを戻させるわけにはいかなかった。

くるりと目を走らせた次の瞬間、ぱっと無邪気で愛想のいい顔に切り替える。そうして小走りにキッチンへ入ってきた。

「智史さん、薫子さん、やっぱり私も手伝います! 外で座ってるだけなんて、ほんとに居たたまれなくて」

言うが早いか、狭いシンクまわりへぐいっと身体をねじ込み、沈村薫子と藤原智史の間に無理やり割って入る。

「えっ、薫子さん、スペアリブってそんなふうに切るんじゃないですよぉ!」

甲高い声を上げるなり、坂原千尋は沈村薫子の手の包丁へそのまま手を伸ばした。

「智史さん、胃が弱いから、もっ...

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