第86章

林原助手は息を呑み、信じられないものを見るように沈村芳明を見つめた。

ようやく落ち着きかけていた松野博の胸に、怒りの火が一瞬で燃え戻る。

彼は勢いよく振り向き、沈村芳明を睨みつけた。噛み殺した獣みたいな目。今にも生きたまま喰いちぎりそうな勢いだった。

「俺は反対だ!」

怒号には、限界まで押し込めた暴力性が滲んでいた。

だが沈村芳明は眉ひとつ動かさない。軽蔑するように一瞥し、口元だけで嘲る。

「お前に資格はない」

「あるって言ったらあるんだよ!」

松野博の理性は、今にもぷつりと切れそうだった。言葉を選ぶ余裕などない。

「俺は……彼女の彼氏だ!」

その肩書きだけが、最後の足掻...

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