第87章

あそこまで狂って、アクセルを踏み抜いてガードレールに突っ込んだ。死ぬつもりだったのに――結局、助けられてしまった。

神様って、本当に性格が悪い。

薫子はゆっくりと眼球だけを動かし、部屋の様子を探った。

広い。静か。医療機器も一通りそろっている。どう見ても、普通の病室じゃない。

半開きのドアの向こうには、小さなリビングのような空間まで見える。

VIP病室。

沈村薫子は、自嘲気味に口元を吊り上げた。

沈村芳明は、金を惜しまないらしい。

まあ当然か。今の自分は、あいつの可愛い息子の「命を繋ぐ薬」なんだから。大事に飼っておかないといけない。

……何を期待してたんだろう。

車に乗せ...

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