第9章

彼の眸の奥を、よほど注意しなければ見落とすほど淡い痛みが、かすめていった。

「本当は、発表会のメイン商品の生地について、細部を確認したくてお電話したんです」

松野は椅子を引き、ベッド脇に腰を下ろした。

長い脚をゆったりと組む。所作は洗練されているのに、不思議と威圧感はない。

「ところが電話に出たのが救急の看護師さんで。あなたが大怪我をして、ナースステーションの前で倒れたと聞いて……そのまま来ました」

深夜の病院へ駆けつけたことすら、まるで取るに足らないことのように、さらりと言う。

そのとき、病室のドアが開いた。

丸顔の若い看護師が処置用のトレーを持って入ってきて、沈村薫子が目を...

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