第94章

「最初に浮かんだのが、あの子を可哀想だと思うことじゃなかったの」

薫子は自嘲するように笑った。

「……私、ほっとしたって思ったの。よかった、もうあの人たちに縛られなくて済むって。母の人生を壊した女の「息子」を、私が救わなくていいんだって……」

「でも、あの子はまだ5歳よ、松野博。何も分かってない。私を守ろうとしてくれて……『お姉さん』って呼んでくれたのに……」

沈村薫子の感情が、ふっと崩れかける。

「それなのに私、あの子の不治の病が治らないことを……喜んでた。私の血には、沈村芳明の冷たさが流れてる。最低で、身勝手で……どうして、こんな人間になっちゃったんだろ……」

鋭い刃を、何度...

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