第21章 艶めかしい

これが他人の口から出たら、松本渚は絶対に信じなかっただろう。

しかしこの人はまさに藤原時、謎めいた藤原様だった。

松本渚は彼の具体的な身分を知らなかったが、海外での一挙一動や、帰国後の派手な高級車から、並外れた地位の持ち主であることは明らかだった。

こんな男は安城市市では聞いたことがなく、おそらく帝都の出身だろう。

彼女はそこについてあまり詳しくなかった。

ただ、松本家や山崎家のような名門でさえ、帝都では上流社会の輪に触れることすらできないと聞いていた。

だから山崎家の次女が帝都の藤原家という超一流の名門に縁づいたことを、一日中自慢げに吹聴していたのだ。

待てよ...藤原家?も...

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