第33章 救世主

その一方、松本渚は確かに階下で山崎琛と鉢合わせていた。

相手はゆっくりとタバコを消すと、彼女の行く手を阻むように近づいてきた。

松本渚はやっとのことでスイートルームから逃げ出したところだった。藤原時に追いつかれるのが怖かったのだが、まさか階下で山崎琛に行く手を阻まれるとは思わなかった。

彼女はこの男がどうやって自分を見つけたのか分からなかった。まるで憑き物のようだ。

全身包帯だらけの怪我をしているというのに、大人しく病院で療養せずに、またこうして騒ぎを起こしている。

「どいて」

山崎琛はまったく譲る気配がなかった。

「渚、俺たちの間に誤解があると思うんだ。ちゃんと話し合うべきだ...

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